お気に入り
5才の頃、洗剤のオマケに付いていた
小さな人形を大事にしてた。
名前はパンちゃん。
綿で出来た直径5cmの白クマだった。
昼間は幼稚園のカバンにぶら下げ
眠る時もいつも一緒。
肌身離さず持ち歩いた。
次第に手垢で薄汚れ、手足や首も落ち
何度も手術を繰り返したボロボロのお気に入り。
他人が見たらギョッとする姿でも
この頃の私の全てだった。
7才のある日。
ベランダで泣きながら激しく母を責めた。
ポケットに入れたまま洗濯してしまったのだ。
目だけを綺麗に残し体が溶けてしまった
無惨な姿の元お気に入り。
掌にのせ、力の限り声を出して泣いた。
そろそろこの生活を卒業するべき
タイミングではあったのかもしれないが
何たる因果だろう。。
オマケとして付いていた洗剤に
消されてしまったのだから。
2/17/2023, 3:18:02 PM