丘のふもとは、暗くて気味悪く映った。
彼は足早に家を目指した。明かりが灯る白い家に着いた時、彼は安堵のため息を漏らした。
戸を開けると、大切な人が胸に飛び込んできた。彼が何も言わないので、不思議そうに彼女は見上げている。
彼は唐突に口角を上げ、その場にひざまずいた。
「たいせつにするから、結婚して欲しい」
「うん」
差し出した指輪など関係なく、彼女は覆いかぶさるように抱きついてきた。
あいつの分まで、そう思うが口には出さない。あいつはどこかで生きている、そう思って彼女、そして彼も暮らしてきたから。
夕食のときに彼女は思い出したように言った。
「先生からの手紙、まだ開けてないの」
彼は手を伸ばしそれを受け取る。
『お元気でしょうか?
また、戦が始まります
どうかご無事で』
彼は思わず外を見た。暗がりに、雷が落ちる音がした。
3/14/2024, 4:00:07 AM