『8月、君に会いたい』
僕が亡くなってもう数年が経つ。
彼女は今でも、お盆の時期になっては、僕の墓に花を供えて泣きながら帰って行く。
本当は僕も死にたくなんてなかった。
でも、人間は病気には勝てないことがある。
ましてや、その病気に治療法がなかったらどうすることも出来ない。
たった一人、彼女を残して逝ってしまう心配をしていた。
でも、彼女は僕に心配をかけないようにといつも笑っていた。
本当は誰よりも泣き虫で、誰よりも寂しがり屋なのに。
少し、嬉しかったなんて言ったら失礼だろうか。
それでも、時々思うのだ。
毎年のように泣きながら帰って行く彼女を見ては、今の僕ではその涙を拭ってあげることも、寂しそうな身体を抱き締めてあげることもできない。
ただ、元気そうな彼女を見ると、少しほっとする。
天国にいると、身体を壊していないか、ご飯はちゃんと食べているか、などといらないことを考えてしまう。
もう、向こう側の人間にはなれないのに。
あぁ、彼女が去っていってしまう。
来年も8月に君に会いたい。
どうか、少しでも長く彼女が元気で過ごせますように。
そう願うしかないのだった。
8/1/2025, 1:43:16 PM