駒月

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「お前、今年の抱負は?」

 年明け早々、班長に呼ばれたと思ったらそんな質問が飛んできた。普通に飲むのだと軽い気持ちでワイングラスを出したところで、だ。

「君は真面目だねぇ、仕事と結婚するのかい?」
「何も仕事だけの話じゃない。お前の抱負を聞いてみたい」
「変わってる。そんなことを聞かれたのは初めてだけれど」

 グラスを並べてワインを注ぐ。赤い色が血のようだと思い口元が緩んだ。

「そうだね……今年はもっと人間らしくしたいかな」
「その顔でか」

 血を想像してにやついていたのを見られていた。

「あと、皆と仲良くしたいね。私のことを理解してくれる者はもういるからいいんだけど」
「いいのか」
「いいんだよ」

 目の高さまでグラスを上げて乾杯する。
 言わなくてもわかるだろう、君が一番の理解者だと。

「美味しい。高いワインを取っておいてよかった」
「ああ、美味いな」
「で、班長の抱負は?私のを聞いたんだから君のも教えたまえよ」
「俺か。俺は……今年も班員を生かす、だな」
「やっぱり仕事だった」

 笑いながらもグラスのワインを飲み干す。抱負はとても班長らしくていいと思った。

「では。皆仲良く生き残れるように、頑張ろうか」
「まぁ、そういうことだな」

 抱負を述べる会は綺麗にまとまり、空のグラスにワインが静かに注がれる。
 新年一発目の宴はまだ始まったばかりだ──
 





 【今年の抱負】

1/2/2024, 1:15:50 PM