ブルーレモネード

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〚ブランコ〛

ブランコには痛い思い出がある。

鎖の金属がきしむ音を思い出すと、
背中がこわばる。

理由はひとつ、園庭のあの場面に、
今でも呼び戻されるからだ。

幼稚園児の頃、私は当時の親友と
並んでブランコに座っていた。

靴先で土を蹴り、そこだけ時間が
ゆっくりになる。

風よりも先に、チェーンが鳴って
私たちの背を押す。

行って、戻って、また行く。

世界が弧を描く。

そのときだ。

やんちゃな一人の男の子が、こちらに向かって駆けてきた。

砂を跳ね飛ばす足音が近づき、私たちの弧と交差しそうな気配がする。

「危ないよ」

言おうとした瞬間、彼は勢い余って
前のめりに転んだ。

視界の端で小さな体が土を抱え込み、音より先に静けさが落ちる。

すぐに泣き声がはじけた。

砂に滲む赤い色。

親友は少々ドライなところがあって
「大丈夫、先生呼んでくる」
と落ち着いた声で言った。

私はというと、膝が抜けたみたいに
立ち上がれない。

ブランコの鎖をぎゅうっと握りしめ、手のひらが痛くなるのも構わず、ただ揺れを止めることしかできなかった。

目を逸らせばいいのに、逸らし方が
分からず、視界の端に赤が残像のようにこびりついた。

その日からだ。

ブランコの座面は私にとって、ただの板ではなくなった。


すっかり成人した今では、ブランコに近寄ることも無い。

公園の前を通り過ぎるとき、
視線は自然と砂場や滑り台へ逃げる。

それでも、あの弧のなかにいた時間のことを、完全に嫌いにはなれない。

単純な往復に、心が軽くなる瞬間は
たしかにあったから。

2/1/2026, 10:58:32 AM