「ずっと隣にいるよ、大丈夫だよ」
「そう言っていなくなるのが人間なんだよ笑ずっとなんて言葉存在しないし証明するとか言ってみんな居なくなっちゃうからわかってるから、ずっと隣にいるなんて言わないで」
ハンドルを握りしめながらかわいた笑顔をうかべている私は彼の目にどう写っているのだろうか。
「ずっと隣で君のことを見守りたい」「隣にいさせて欲しい」「隣で色んな景色を見たい」「隣にいて欲しい」
そう思うことなんて沢山あった。
吹奏楽の演奏を聴きに行く機会があった。
どのような曲想で作者はどのような想いを込めて創ったのか、曲を聴きながらパンフレットを読み込んでいくなんとも不思議な空間が広がる少し特殊な演奏会。
「次に演奏致します曲は、南国のコバルトブルーの海を描いた曲です。私は南国の海をテーマに作曲してくれと依頼された際、実際にこの目で見たことは無いので様々な本や資料を使って取り込んでいきました。その中でも特に印象に残ったのが真っ青な海が真っ黒に染まったという本です。」
この本は、私の知っている本だ。私が今1番気になっている著者が執筆した本。曲全体的にどこか懐かしいような、それでいて想いだしたら壊れてしまいそうな雰囲気がした。聴いていて何故か涙が溢れた。きっと演奏した団体が全国でも有名な、感受性の高い音楽を届けることの出来る高校生達だったからに違いない。決して、断じて違うのだ。なにも考えてないし何も思い出してない。
次に聴いた曲は、とある地域の民謡だった。
指揮を表しながらその地域の独特さを表す曲。
春には桜、夏には大きなお祭り。夏の部分に差し掛かった瞬間に「この人と一緒に夏を過ごしたい」と勝手に考えていてはっとさせられた。
隣で夏をすごしたいと思った。
暑くて外に出たがらないだろう、殊更今年の夏は外に出る機会がないからきっと私は出ない。
人混みがお互い嫌いだから夏祭りに行こうと言ってもきっと行けないのだろう。
ただ夜の虫の音を聴きながら河辺でゆっくりりんご飴が食べたいと思った。
何を話すでもなく、夜にのんびり話がしたい。
曲を聴いていて想ってしまったのだ。
「ずっと隣にいさせて欲しい。」
この言葉を信じるのがずっと怖かった。
また居なくなってしまったら?1人になってしまったら、
もうあんな思いをするのは二度とごめんだった。
今でも怖い。けれど一つだけわかったことがある。
「きっと今の君はそう思ってくれてるから言ってくれるんだよね。もしも変わってしまったとしてもそれはしょうがない事で、でもあの時の君はそう望んでくれていたと思えば少しだけ心が軽くなるんだ」
人を信じるのが本当に怖くなった。傷つくくらいなら傷つけた方が100倍増しだと本気で思った。
傷つくのが怖かった。
だけどこのままじゃダメだと思うから
ゆっくり前を向き始めようと思った。
春風に身を包まれて。
3/13/2023, 3:46:16 PM