「現実逃避してたって、意味ないでしょ。」
疲れからか顔色が悪い彼女に気分転換を申し出た。
「そんなことないと思うけどな。」
「どうして?」
心底不思議そうな顔をしていた。どうやらほんとうに思いもよらなかったらしい。
「一旦心を休めたら、頭を切り替えられる気がしない?私はいつもどうしようもなくなったら、そうしてる。」
「わたしとあなたは違うわ。」
確かに、彼女には意味はないかもしれない。しかしその表情は寂しそうに見えた。
「……そうだね。」
「でも、ただ同じことを考え続けるよりは、一旦止めたほうが効率はいいかもね。」
意外だった。頑なな彼女だから私の提案には乗らないだろうと思っていた。それでも気に掛けていたいのだけれど。
「うん、じゃあ電車に乗って少し遠くへ行かない?」
きっと、ひとりより誰かといたほうが嫌なことは忘れられるだろうと思う。
「そうね、たまにはそういうのも悪くないかもしれないわ。」
一緒に、少しだけ非日常へ向かう。帰ってくるために。
2/27/2023, 5:54:51 PM