もしも未来を見れるなら
ある夜、路地裏で占い師に声をかけられた。
「自分の未来を知りたいとは思いませんか?」
普段なら無視するところだが、その夜に限って足を止めた。
「このVRゴーグルをつけると、あなたの未来をすべて見ることができます」
最近の占いはハイテクだな、と思いながら僕はそれを装着した。
そして、自分の未来をダイジェスト映像で見た。
まず、今から二年後に戦争が始まる。僕は強制収容所に送られ、過酷な環境で心身を破壊される。身近な人は皆戦争で死ぬ。
だが、最終的にこの国は勝ち、奇跡的に生き延びた僕は控えめで家庭的な女性と結婚し、子を儲け、穏やかで平凡な日常を手に入れる。そして、病院で家族に見守られながら息を引き取る。
画面が真っ暗になり、ピーーっという心電図の音。
——これでおしまいか、とため息をついてゴーグルを外そうとした。その瞬間、
『いや! 死なないで、お父さん!』
娘の悲痛な泣き声が、最後に耳元で響いた。
「いかがでしたか?」
「うん……なんていうか、僕らしくない人生だな。それに少し、後味が悪い」
「人生なんてそんなものですよ」
「かもね」
僕が指を鳴らすと、近くで待機していた部下たちが一斉に現れ、占い師を取り押さえた。
「実は、最近この地区で自殺者が増えていましてね。その原因が、生きる気力をなくさせる占いです。あなた、敵国の工作員ですね?」
「だとしたら何だ? その未来は本物だぞ! あんたの人生も、今見た通りの未来になる!」
「いやぁ、それはあり得ないな。だって戦争になったら、この国はさ……」
占い師を連行した後、部下が飲みに誘ってきた。
「今日は遠慮しておくよ」
「何かご用事でも?」
「うん、ちょっとロープを買いに行こうかなって。首をくくる用に」
4/19/2026, 5:03:58 PM