月が満ちて欠けていく。夜空の女王の姿は日を重ねる毎に細く輝きも弱くなる。そして姿を消したあと再び輝きを取り戻して暗い夜空に君臨した。
月のない夜。主役は一時のあいだ星たちへ引き継がれる。散りばめられた星は控えめなものや一等光るものなど、人のように個性様々だった。
郷愁を覚えるとふらりと立ち寄ってしまう湖に「夜の散歩に」と君を連れてきた。
夜を映した湖は風もなく穏やかなもの。星ひとつひとつを指さして自分たちの星座を探し、分からないものには適当な名前を付けて遊んでいた。
「寒い地域は空気が澄んでて星が見やすいんだよね?」
「ああ。ここよりももっと見える。流星群の時期なんか特におすすめだよ」
静かになった君は星空を眺めて想像しているんだろうか。手を伸ばしたり首を捻ったりしている。
「…ほんとに星が落ちたりは?」
「あははっ!迫力はあるけどしないって。もし落ちても湖が受け止めてくれるよ。…それでも気がかりなら俺と踊ろうか」
空から溢(こぼ)れ落ちてきそうと憂う君の手を恭しく取り、夜空を映す『星が溢(あふ)れる』湖を舞台に
君とワルツを。
3/15/2023, 11:28:08 PM