九重

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今までそれなりに、いや、結構な苦労をして生きてきた。
恥の多い人生を送ってきました、と文豪のように言えたらそれはそれで格好がつくが、何のことはない、ただただ生きるのが下手なだけだった。
それは大概今も変わっていないので、ほれ戻れ、と言われた所で同じ苦労をしにわざわざ戻りたくはない。

たくさんの失敗と、苦い経験と、辛酸をなめて地面を這いずり、それでも生きねばとあがいたり流されたり絶望しながら、ようやくここまでたどり着いた。
よたよたと転びながらも続けてきたこの大事な足跡を、わざわざ消して戻るほどクリティカルな出来事が私には無い。

もしかしたら、つまり、
案外と私は幸せに生きてきたのかもしれないな、
とそんなことを思った。



お題・もしもタイムマシンがあったなら

7/23/2024, 6:59:33 AM