いしか

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窓から見える景色。
何も変わらない。
唯一違うのは、私の他にもう一人、私と同じ景色を見る人物が増えた事だ。

「おはよー。傑(すぐる)起きて、もう起きないと遅刻するよっ」
「うーーーん。あと5分……………」

傑の寝起きはとても悪い。
付き合って初めて朝を迎えたときにそれは判明した。そのお陰で、私は結局仕事を遅刻する羽目になった。それも初めて。

「もう、知らないからねっ!私、先に準備始めるよっ!」
そう言って洗面所に行こうとしたら、傑に腕を引っ張られる。

「!!」
「こと菜も、まだねてよ?」
寝ぼけてことを言っている傑。私は負けじと
「寝ない!ちこくするも……………つ」
言い終わる前に、次は口を塞がれた。
クソー、負けた。
それに、朝イチだぞー。

「もうっ、寝ぼけてないで早く起きてっ!」
「こと菜」
「なにっ!」


「………好き」
「…………!!」

不意に言われた言葉に私は思考停止。
こういう所が狡くて、可愛い。

「私だって、好きだよ」
お返しのつもりで言い返した。それを知ってか知らずか、えへへへ、と傑は寝ぼけ眼(まなこ)で笑う。

「好きだからっ、早く起きてー!!」
私は体をジタバタするものの、傑の力は強い。クソッ、男がっ!!

結局、傑のせいでこの日も遅刻する事になるのだが、何だが怒れない私。

傑はきっと気づいてない。
貴方の言う、好きが、どれ程の力を持っているのか。
そして、その好きという言葉に、私がどれ程絆(ほだ)されているのか、傑は知らない。

9/25/2023, 12:01:56 PM