川瀬りん

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『心の灯火』


長く続く戦乱の世がいつ終わるとも知れぬ。
果てしない斬り合いに、己の心が荒んでいくのを感じていた。
会話も、共に過ごした時間もなければ、顔すら見たことがない人をこの手にかける。

心の底では「人なんて斬りたくない」
多くの者がそう思っているのに、大義だの誇りだの勝利だののために刀を抜く。
話し合うこともせず、ただ力で黙らせることに未来はあるのだろうか。

そう、自身も疑問を抱いているのに
この体は止まらない。

とっくに心が壊れていてもおかしくはないのに、紙一重で正気を保っていられるのは
そんな己にも帰りを待つ愛する女〈ひと〉がいるからである。
彼の女の笑った顔、優しい顔――多様な顔の記憶が、刀を握りしめている間でも己の心に灯火を与えている。

必ず生きて帰る。
己が己を保つために。




創作 2023/09/03

9/2/2023, 3:27:40 PM