《何でもないフリ》
瞬きは今の自分にとって遅すぎる程度に。
呼吸は音もしないよう浅く絶えずして。
高さ、テンション、速度、滑舌、大きさの全てに至るまで『いつも通り』の声を。
間は取りすぎず、多少作りつつ。
メトロノームを頭の隅で鳴らして心拍を整えながら。
隙を殺しすぎず、作りすぎない程度に気を張って。
そして、強者の仮面をズラして弱者の仮面を半分見せる。
その上から不透明のベールを着けて、最低限は完成だ。
できればこれらの相手に与える情報を無意識に操作できるようにしてから場について欲しいものだが。
大切なのはディーラーや相手に仕掛けがバレてはいけないこと、ただ一つ。
イカサマとは、そういうものだ。
雑魚には、何かすら悟らせてはいけない。
強者には、何もないと思い込ませてもいけない。
万人に、何でもないフリをして、何かがあると思わせることが必要なのだ。
それの正体を隠したまま。
それを焦りに見せるか、虚勢に見せるか、イカサマに見せるかは己の技量次第だ。
12/11/2024, 10:55:51 PM