謎い物語の語り手

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【夜が明けた。】

太陽と月の戦争で、月の勝利から星霜。
永い永い夜の時代が終わった。

暗がりの女王は隠れ、その子らは捕らえられた。
明るい王は彼らを照らして、その冠を戴いた。

「さあ照らせ。この平穏を遠くまで」

明るい王が弓矢を放った。
光は波紋のように広がり陽が降り注ぐ。

暗がりの女王の得物であった夜の盾は、
その敬意とももに空へ飾られた。

盾は実体を失くし広がっていった。

そして真ん中に嵌められた夜の象徴たる天然衛星だけがその場に取り残されたのだ。

明るい王は星々を従え天に登った。
光は彼方へ行き届いた。

明るい王は隠れた月にすら面影の役を与えた。
太陽の時には活発を、月の時には休息を。

眠っていた全ての命はもうじき目覚めるだろう。
この陽の光の下に。そして命は巡り始める。

廻る星々の真ん中に太陽は鎮座した。夜が明けた。

4/29/2025, 5:13:11 AM