遠い日の記憶
「好きです」
そう告白されて、目の前にいる女性よりも、別な子を思い出していた。
まだ中学生だった頃、桜の樹の下で告白してきた少女を。
その子がポニーテールをしていたからか、それとも今告白してきている女性も、同じポニーテールだからか、そんな遠い日の記憶が蘇った。
重ね合わせているのだろう。
でも過去のあの子と、今目の前にいる子では全然違う。
「……ごめんね」
そう僕は昔と同様に断った。
あの子は今は何をしているのだろうか。
僕が医者を目指すと言った時には、それなら私は看護師になりますと言っていたな。
看護師になっているのだろうか。
僕の知らないどこかで、同じ業界で働いているのかもしれない。
たまには実家に帰ってみよう。
もしかしたら、どこかで彼女に会えるのかもしれない。
そう思った時、僕はあの時断ったことを後悔しているのかもしれないと今更ながら自覚した。
何となく会いたいと思った。
地元の友達に聞けば、誰かしら連絡先を知っているかもしれない。
心がこんなにも忙しない。
会える予感が何となくしたからだ。
あの子の笑顔にたまらなく会いたい。
7/17/2024, 12:58:12 PM