夜明け前に私は起きて、ベランダへ出た。
ベランダにある椅子に腰掛けて、そこで朝と夜の境目の空を眺めている。
空や空気は静かで澄んでいる。
私は、この時間の空が何だが好きだ。
「………眠れなかったの?」
後から声をかけられた。
「宏和(ひろかず)、ごめん。起こしちゃった?」
「ううん。何時もの温もりがないから自分でも起きたー」
「はぁ?(笑)何言ってんのよ」
「だって、あつみ、温かいじゃん。心地いいんだよ。その温かさ」
「夏だったら暑いだけじゃん」
「今は夏じゃありませんっ」
「……………………確かに」
宏和は、話し方がおちゃらけているようで、何処かまるさを持っている。
私は、そのまるさが好きだ。
「…………目が、スッて覚めちゃったの
本当は、もう少し寝ていたかったけど……休みだから。けど、何だが、目が覚めちゃった」
「だったら、もう一回布団にはいろ?
眠れなくても、横になろうよ。」
宏和にそう促され、手を取られ、私は寝室へと戻った。
「スッて目が覚めたのは、本当で嘘だね。
あつみ、何だか自分でも分からないけれど、心配になっちゃったんじゃないの?」
宏和は、何でわかるのだろう。全部正解だ。私、そんなにわかりやすい?
「………、うん。正解……」
「お、当たった?あはは、流石だな。俺、伊達に あつみの彼氏やってないわ」
「なんだそれっ」
宏和は宏和の近くにある方の私の手を優しく包んできた。
「………大丈夫だよ。平気。
あつみ、だけじゃないから。俺が居るから
だから、大丈夫。大丈夫だから、もう少し寝てな。………ね?」
宏和の手の温もりと声に、私は段々と落ち着き、眠りに落ちていく。
宏和だって、手が温い(ぬくい)。
宏和の温もりを感じながら、私はもう一度、眠りの世界へと入っていく。
夢にも出てきた宏和と、幸せな時間を過ごしている、そんな夢を見ながら。
9/13/2023, 8:59:48 PM