『逆さま』
髪が風でなびいていた。
真っ逆さまに落下している。
学校の屋上から誰かに落とされた。
落ちるのは怖いけれど、家族や友達との記憶が走馬灯のように蘇ってくる。
そうだ。思い出した。『由里』だ。由里は昔から私のことを嫌っていて、いつも嫌がらせをされてきた。
「やめてよっ……」
「ダンスクラブも真面目にやらないくせに、調子乗らないでよ!」
由里とあの時は口論していたんだ。
(ああ、私は由里に負けたんだ。)
「良かったね。これでダンスクラブの邪魔が消えるよ!」
由里がにやりと笑って私を突き落としたんだ。
「じゃあね!」
そして、私の背中を押した。長い髪が揺れる。下を見てしまった。人や車が交差している。
「ああっ……助けてよっ……凛!」
12/6/2023, 10:49:23 AM