やりたいこと
「小説家になりたいんだ。だからやらせてほしい。」
私は家でずっと言いたかったことをついに言った。
今までずっと先延ばしにしていた。
でも学校ではもう将来何になりたいか決まってそれについて色々調べていて自分だけ置いていかれそうで怖かった。
そんな恐怖から明日言おう。明日こそって言おうとしたけど、言えなかった。怖かった。
でも、今言えた。
恐る恐るお父さんとお母さんの方を見る。
「紗央里にやりたいことがあって安心した。
でも、小説家はやめときなさい。」
「そうよ。小説家は大変よ。看護師とか医療系に入っ
た方が将来安心よ。」
こう言われることがわかっていたから。
反対されることはわかっていたけど、やっぱり実際に言われると落ち込む。
分かってるんだ。お母さんやお父さんが私のことを思っていってくれてるってことは。
でも、大変でもいいからやってみたかった。
ちゃんと、前に進んでちゃんと目指したかった。
そんな思いを伝えようと口を開く。
「でもね、大変なのは分かってるけど・・・
やってみたい。」
そう伝えるとお母さんは険しい表情で言う。
「やめときなさい。」
なんで応援してくれないんだろう。
将来大変なんて分かってる。
でも、私は人を笑顔にさせるようなまた読みたいって思えるような小説を書きたいんだよ。
頭ごなしに否定なんてしないで。
お父さんの方を見るとお母さんと同じ表情をしていた。
「ちょっと、外行ってくる。」
そう言って私は上着だけ持って外に出た。
家の近くの公園で1人静かに泣いていた。
こんな思いするなら言わない方が良かったかな。
苦しい・・・・・。悔しい・・・・・。
でもずっと言えないままだともっと苦しかった。
「大丈夫か?こんな時間に女1人だと襲われるぞ。」
そんな声がした。
誰だろう?
上を向いたら自分と同じ年ぐらいの男子がいた。
その彼は私の横に座った。
「どうしたんだ?こんなところで1人で泣いて。」
全部吐き出したい。
初めて会った人にそう思った。
だから私は今まであったことを伝えた。
自分がどうしたいのか。
お母さんやお父さんにはどうしてほしいのか。
「お前の話しだけじゃ、お前の気持ち全部はわからねえ
から、 大丈夫だ。なんてこと言えねーけど、人生一
度しかないんだそ?どんなに苦しくても、誰かが反
対しても後悔しないように親は説得して自分ができる
とこまでやって見ればいいんじゃないの?
お前の人生なんだし。
一回しかない自分の人生悔いのないように過ごすしか
ないだろ?
時間はずっとあるわけじゃないんだから。」
そうだよね。一度きりの私の人生だもん。
全部を吐き出して、彼の話しを聞いてほんの少しだけ気持ちが楽になった。
私の表情を見てその彼は安心したように笑った。
「もう、大丈夫だな。頑張れよ?」
私の頭を撫でて、私の家とは反対側に歩いて行った。
「ありがとう。」
どんどう見えなくなっていく背中に私はお礼を言った。
彼のおかげで心がすっきりしていた。
6/10/2023, 10:58:31 AM