初心者太郎

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とある研究所の研究室にて。
一体の人型ロボットが花束を抱えて、白衣を着た男性の前に立っていた。

「博士、逝ってしまったのですね」

博士と呼ばれるその男性は、椅子に腰掛けたままぴくりとも動かない。

「これは感謝の証です」

花束を、博士の太ももの上に置いた。

「人間の寿命は永遠ではありませんから、いつかはこんな日が来ると思っていました。ですが……、やっぱり悲しいです」

俯き、自分の気持ちを吐き出した。

「貴方が私をロボに変えてくださらなかったら、私はとっくに死んでいたのです。これからの私の人生は、貴方の為に使おうと思います」

博士は、病気や事故で身体を失った人々に『生き続ける身体』を与えてきた人だった。

『命は永遠ではない。けれど人の夢を繋ぎたい。』
それが博士の想い。

「博士、見ていてください。必ず貴方の夢を繋いでみせます」

ロボットは博士の予備の白衣を羽織り、静かに部屋を後にした。

お題:永遠なんて、ないけれど

9/29/2025, 1:49:11 AM