溢れ出す言葉

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翼が折れてからどれくらいでしょうか。
喉に住むロマンシズムは、今にも歌い出しそうです。
失望なのか?そんなものでは無かったです。
飛べたら、なんて夢を見る余裕も無かったのですから。
ただ、目線は地平線に倒れ、足は忙しなく歩いていた。
それだけです。それが突然、潜めていた幸せが喉をつつき出して
慣れない姿勢になって、

空を見上げた。

喉から出たのは溜め込んでいた少量の空気。
水の中の気泡がぽくぽくと、宙へ上がる。

此処にいたくない。
空の奥には、藍色の瞳孔。
惑わされているのを知ってる。私の翼をどうか呑み込んでください。
波紋の円が私を上へ上へと昇らせる。
砂漠の砂が私の足を引っ張るから、ほら早く行って。
スピードに乗って飛んでゆく。
何処へ向かう、下は見ないと約束して。
優しくて、爽快な音がするんです。
強欲だって手を引いてくれたって良いんです。
私の今は此処にあるんです。
ここでない此処に。
 濁らない風に当たりましょう。
 ここでない何処かに行きましょう。
折れちゃった翼に嫌気が差したなら、取ってしまって、
空の奥があなたを頭から呑み込んで。
すべて私が悪いんです、そう言って私が手を引きます。
最後になるかもしれなくても、
歌を歌って、返しのない問を風に投げかけたなら、
風に溺れたなら、たどり着きます。
ここでない此処に。




【ここではないどこか】

6/27/2023, 11:14:02 AM