謎い物語の語り手

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【何でもないフリ】

親友が恋をした。相手は穏やかでかっこいい聖歌隊。
親友はたまに彼と通っている教会内で話すようだった。

かっこいい。目が離せない。
そんな言葉を何度も聞いた。

彼の事を聞けば、親友は心から楽しそうな顔で何度も話をしてくれた。彼女はこんなにも輝いているのに。

あなただけが好いている相手だから、愛想良く返してくれても仲良くしてくれることはない。

あなたから手紙を送っても、相手がその手紙を待つことはない。そして、彼から手紙をくれることもない。

相手からあなたに近づいて、あなたに愛の籠る目を向けることはない。

私の占いには、彼女の淡くて深い心が彼に届くことはないと出ていた。彼女が可哀想で仕方なかった。

せめてひとときの幻でも。それか禁術を。
そう思った。でも、親友はいつもの幸せな顔で呟いた。

「叶わないことは分かっているの。でも良いのよ。」

「…分かっているの?なぜ?良いはずないわ」

「未熟な私はまだ愛を分かっていないから。ただ執着するのが好きなだけ。叶う恋は早いんだわ。」

ああ、彼女はきっと、心が引き裂かれても笑うのだろう。「幸せな夢だった」とでも言いながら。

何でもないフリをして、自ら破滅の道を行くのだろう。

12/11/2024, 7:39:13 PM