古井戸の底

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鍵をかけた自室の中で、イヤホンでLoFiを聴きながら本を読む。他人と接するのに人一倍体力を消耗する愛寧にとって、好きなものに囲まれて過ごす時間は唯一の回復手段である。誰も否定して来ない、ただ彼女を静かに受け入れてくれるこの場所は、家族が立ち入ることも許さない聖域だ。
愛寧は昨日買ってきたタウン誌のカフェ特集を眺めていた。レトロな喫茶店が目に留まる。最寄りから電車で二駅のところにあるようだ。明日は土曜日。愛寧はマップアプリを開き、ピンを立てた。

【ひとりきり】

9/11/2025, 11:40:02 AM