いぐあな

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300字小説

忘れられない言葉

 私は赤ん坊の私以外、乗組員が全滅した宇宙船の中で、ロボット達を家族、友人として育った。
 今でも思い出す。父が船内農場から帰ってくる足音。栄養も味も満たせるように、私の食事を丁寧に作る母。食べるのは私だけだったけど、父と母とおしゃべりしながら囲む食卓はとても優しかった。
 私の情操教育の為に学校を開いてくれた先生。そしてクラスメイトの友達。救難信号を受け取った救助艇が来るまで、毎日が楽しくて寂しいなんて思ったことがなかった。……だから。
 あの宇宙船は私が救助された後、そのままになっているという。
『また会えるよ』
 別れるときの、いつまでも忘れられない彼等の言葉を胸に、私はかの宙域に向かう探査船に乗り込んだ。

お題「忘れられない、いつまでも」

5/9/2024, 11:56:00 AM