秋色
「秋になると身に纏う色も秋っぽくしてお洒落したいよね。それって僕ら人間だけじゃないって知ってる?おしゃれする信号機とかあってさ、秋になるとちゃんと秋カラーで光るんだよ。ダークネイビー、ゴールデンイエロー、ボルドー。たまにだけどあるんだって、そういう信号機。信号待ちしてる時とか、よく見てみなよ。
逆に紅葉だって、毎年同じ色合いじゃ飽きるのか違う色に染まる木だってある。本当だって。俺一度見たことあるんだ、山奥で。青色に色付いた木が何本もあった。あれは本当に綺麗だったな。薄くくすんだ青から紫がかった濃い青まであって……別の世界に迷い込んだみたいだったよ。君にも見せたかった。いつか一緒に見に行こう」
適当なことばっかりいう人だったなあ……
学生時代の友人に、いつもそんな夢みたいな話ばかりする人がいた。あの人今頃何してんだろ、ちゃんと社会人してるかな。青く色づいた木を見に行こうだなんて、あれってもしかして私のこと口説いてたのかもしれない。だとしたらごめん、全然気づかなかった。
秋カラーの信号機もブルーの紅葉も見たことない。絶対、その人の嘘だと思う。だけど秋になるとつい、目で探してしまう。秋色に染まった街のどこかにあるんじゃないかって。おしゃれした信号機、青く色づく葉っぱ。だってもしそんなの本当にあったとしたらきっと──めちゃくちゃ素敵だ。
9/19/2025, 5:14:24 PM