ほろ

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7年前、夜空が輝いた日があった。
夜だというのに明るくて、何事かと全世界の人間が外を見た。そこで人類が目にしたのは、夜空を埋め尽くす星々。

ある学者は言った。あれは、星が一斉に寿命を終えたのだと。
ある宇宙飛行士は言った。あれは、流星群だと。
ある芸人は言った。あれは、宇宙人が大量に攻めてきた報せだったと。

当時は様々な意見が飛び交った。しかし、星々が夜空を埋め尽くしていたのはほんの3時間程度のことで、それ以来同じ現象が起きることはなかった。
そして、7年後。ある学校の屋上に、男子高校生が2人。話題は、あの星々。

「7年前のさ」
「星のやつ?」
「そう。あれさ、思ったんだけど」
「うん」
「宇宙がちっちゃくなってるんじゃないかな」
ちっちゃく、と丸い頭の男子高校生は繰り返す。
相手の角刈りの男子高校生は、一度頷いて続ける。
「宇宙がちっちゃくなって、星が収まりきらなくて、そんで溢れちゃったんじゃないかな」
「そりゃあ、ロマンチックだね」
「ロマンチックかな?」
「ロマンチックだよ」
本当にそうだったら、歴史的発見だろうけどね。丸い頭の男子高校生は、笑いながら角刈りの男子高校生に弁当のミートボールを分ける。
「ま、仮にその説の通りなら、毎日夜が明るくなりそうだけど」
「うーん、そっかあ……いい説だと思ったんだけどなぁ」
「また考えてよ、ロマンチスト」
「お前、面白がってるだろ」
「毎日君の仮説を聞いてるからね。明日も楽しみにしてる」
星が溢れる、とは今日のはなかなか詩的な表現だったなと、丸い頭の男子高校生は微笑んだ。

3/15/2024, 10:56:53 AM