27(ツナ)

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遠い足音

私は学園のいわゆるマドンナ的な立場だったと思う。
毎日、色んな男の子たちが代わる代わる私に声をかけてくる、私も悪い気はしなかった。
だからこそ、知らない間に私への憎悪が無数に産まれたのだろう。

3年生の卒業間近のある日、教室棟と管理棟を繋ぐ3階の渡り廊下で私は誰かに突き落とされた。
落ちている間は本当にスローモーションのようで逆さまに写る世界が摩訶不思議で面白くて、きっと私は笑っていた。
落ちたあとの事はあまり覚えていないが。
目の前が真っ暗になって何も見えなくて、微かに耳だけが聞こえていた。近くに誰かがいる、けれどその誰かは「クスッ」と笑ってどこかへ去っていった。
遠くなる足音を聞きながら私の意識は完全に消えていった。

10/2/2025, 10:13:48 AM