「星になる」
コーヒーの湯気のように、
この世界からそっと、
立ちのぼっていきたいと思うことがある。
ベランダから見上げる夜空は、
いつもひどく遠い。
でも、きっとあの星々は、
誰かがこの場所を恋しく想う心でできている。
クロが膝の上で小さく寝息を立てる。
その重みと温かさが、
私を今の場所に繋ぎ止めるアンカーだ。
いつか、私がこの身体を抜け出し、
ただの光の粒になったとしても、
クロの夢の中くらいには、
時々、ふわっと降りていきたい。
温かいマグカップを両手で包みながら、願う。
愛しいものの記憶の中で、
私はただ静かに輝くひと粒の星になりたい。
それで充分。
クロが顔を上げ、私を覗き込む。
まだ、お散歩の時間じゃないよ。
大丈夫。もう少し、ここにいるからね。
12/14/2025, 9:59:15 PM