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花よ蝶よ

「花よ」
「いーや、蝶だね」
狭い居酒屋の狭い席。
そこで言い争う酔っ払い二人は、非常に残念なことに俺の幼馴染だ。
俺たちの共通の友人が旅先から送ってきた絵葉書。この一枚の写真が騒動の原因だった。

「これはどこからどう見てもナージャカランカの花冠よ。それくらいも見分けられないなんて、眼科に行った方がいいわよ」
「冗談だろ? アイツが絵葉書を送ってきた国の名前を覚えてないのか? 健忘症か? これはドミール共和国の国蝶。キリルレサーナンで間違いないね」

さっきからこの調子で、花よ蝶よと喧々諤々だ。

狭い店内で人目も気になりだしたので、そろそろ話に蹴りをつけるべく俺は口を挟むことにした。
「まぁまぁ、二人とも落ち着けよ。
ところで、学術名シュナイダー・シーオリコスって鳥を知ってるか? この絵葉書の写真はその鳥の尾羽にそっくりなんだが」
「はぁ!?」
「おいおい鳥とか正気かよ……」

俺たちの熱い夜はまだまだ続くようだ。



// 花よ蝶よ

8/14/2023, 11:26:52 AM