「〇〇――!〇〇―――!」
突然聞こえてきた
私を呼ぶ声。
いつもよりキーが高くて
弱々しいのにしっかり聞こえてくる声。
声のする方へ向かうと
布団に抱きついて
半分微睡みの中に落ちた彼がいた。
彼の額にキスをすると
少し意識が浮上したのか
両手を伸ばしてハグをせがんでくる。
こうして甘えられると
私の母性がくすぐられてくる。
さっきの声も
まるで仔猫が母猫を呼ぶような
甘えと切実さを含んでいた。
『私のことなんて待たずに
寝てしまってもよかったのに』
そう思っても
求められるとやっぱりうれしい。
ふわりと頭を抱え込んで
よしよしと頭を撫でる。
起きているときはクールぶっているのに
こういうところを見せるのは
反則だと思う。
ひと通り撫でくりまわして
また彼がうとうとし始めたのを確認して
私も自分の寝支度を始める。
私が布団に潜り込む頃には
隣で小さな寝息を立てていた。
少しさみしくなって
彼の腕を抱きかかえて
肩に自分の頭を擦り付ける。
じんわり温かい体温が伝わってきて
私も瞼を閉じた。
彼も一緒だったのかな。
眠る間際のさみしさも
相手の温もりで満たされる心も。
『一緒だったら、うれしいなぁ…』
そう思いながら
今日も私は眠りについた。
#眠りにつく前に
11/2/2024, 1:28:33 PM