霜月 朔(創作)

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クリスタル



俺の心は、
ずっと孤独だった。
醜い社会や残酷な人間から、
必死に身を潜め、
薄っぺらい笑顔を貼り付け、
本心を隠し、生き抜いてきた。

俺の心の中にある、
暗い闇が育てた水晶は、
硝子よりずっと冷たくて。
硝子よりもっと残酷で。

ずっとずっと。
光の射さない、
地面の中に居られれば、
自分がこんなにも透明だなんて、
気が付かなかったのに。

こんな俺に、
笑い掛けてくれた人。
それが、君だった。

君が余りに輝いてたから。
俺は、明るい世界に、
憧れてしまったんだ。

俺は君の側に居たくて。
だけど、
それを言うことは出来なくて。
ただ、君の側で、
友達として、過ごしてきた。

長い時間を掛けて、
心の洞窟の奥で、
密やかに育ってきた、
水晶の様な、恋心。

哀しい程に透明な、
君への叶わぬ想いが、
結晶の様に煌めき、
俺の胸を斬りつけるんだ。

光が虹色に揺れて、
滲んで消える、クリスタル。
粉々に壊してしまえば、
硝子も水晶も氷塊も、
変わりはしない。

そして、直ぐに。
キラリと光る粒となって、
消えて行くだろうから。

7/3/2025, 6:22:23 AM