とんっと肘がぶつかって反射的にごめんと謝った僕にこちらこそと彼女は微笑んだ
そういえば最近よくこんな風なやりとりをする気がする
一緒に勉強をしてる時
隣同士の席でお互いの友達を交えて話してる時
放課後取り留めもない話で笑ってる時
大体肘か肩がぶつかって、女の子相手に申し訳ないな、なんて僕がすぐ謝って、彼女がこちらこそと笑う
え、僕距離感掴めてない…?
えー、人によくぶつかる程とかヤバくない…?
「ねぇ!聞いてる?」
いきなりドアップの彼女が僕の思考を全部掻っ攫って行った
いやいや、近い近い!
それは顔が違すぎるでしょ!
聞いてなかったのは悪かったけど!
「もー、やっぱり聞いてなかった!」
ムッとした彼女が座り直したのは僕の隣で
…それも近くない?
だってちょっと動けば肩が触れそう
今だってお互いの手が触れそうだし
今日近いな…いや、今日だけじゃない
一緒に勉強してる時も友達と話してる時も今みたいななんでもない話の時も
彼女は僕の凄く近くにいた
鈍感な僕はノート見えにくいかなとか話聞こえづらいかなとしか思ってなかったけど…
あ、なんだ
この距離は
この近さは
彼女が僕に許してくれる距離感だ
不器用で素直じゃない彼女が一生懸命に行動してくれたのに僕は本当にこういうことに気づかないんだな
「あのさ!」
大きい声を出した僕に彼女が驚いた顔をする
「手繋いでもいい?」
あれ、なんか違う気がする…
「え、今?急に?」
そうだよね、これ絶対違うよね
間違えたよね
「ごめん…なんか間違えた気がする」
項垂れた僕に彼女はお腹を抱えて笑った
苦しそうな息が漏れてる
一頻り笑った後、少し微笑んでいいよと手を出してくれた
あーあ、僕は本当に何かも彼女には絶対叶わないだろうし、察しは悪いし、彼女以上に不器用だけど
「好きだよ」
素直さは彼女よりはあるつもりなのでどんな事も恥ずかしがらずに伝えていこう
遠慮がちに握った手の先、彼女は本当に本当に嬉しそうに笑ってくれた
これからもこの1番近い距離でこんな彼女の表情が見れたら嬉しい
その笑顔に答えるように小さな手をギュッと握り直した
12/1/2024, 12:09:04 PM