望まぬ、最期。肺の空気は、もう無い。荒波に呑まれ、船は沈んでいく。口から空気の泡が溢れて、上へ上へと登ってゆく。美しい。なんと、美しいのだろう。青く澄んだ海の中から見る太陽は眩く輝き、空気の泡は白く透明な丸い水晶みたいだった。今生に悔いが無いと言えば、嘘に成る。しかし、これほど美しい光景を最期に見られたのだ。ならば、もう生を諦めて良いと思えた。
1/20/2024, 2:48:04 PM