箱庭メリィ

Open App

黄色と青のマグカップ。
彼と揃いで買った安物だけど、私はとても気に入っていた。

食事の時、一休みする時、喧嘩したあとの話し合いの時。
幾度も私達のそばにいて、見守ってきてくれた。

でもそれも今日で終わり。
青いマグカップは捨てていいと言われた。私と同じように。
私と黄色いマグカップだけが、この部屋に残ることになった。

もう揃いのマグカップにコーヒーを入れることはない。
出ていった彼の青いマグカップには、白い底に黒い円がひとつ、まるで外していった婚約指輪のように残っていた。

黄色いマグカップの底には、溶け残った砂糖がひとさじ、茶色い砂塵となって隅に寄っていた。


/6/16『マグカップ』

6/15/2025, 4:28:27 PM