Frieden

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「たくさんの想い出」

私が死んでからもう一万年も経ってしまった。
沢山の罪を重ねたまま、罪滅ぼしもまともにできないまま、私は突然死んだ。

犯した罪の数々はいまだに忘れられない。
だが、それよりも忘れられないことがある。
それは、紛れもない。君たち双子のことだよ。

⬜︎⬜︎。君は⬛︎⬛︎よりも2分だけ早く起動した。
ぱっちりとした綺麗な目を、ゆっくりと開いてこちらを見た時のことをいまだに忘れられない。

ベッドから下りるかどうかテストしようとした時は驚いた。
自分で降りるのではなく、私の方に腕をいっぱいに伸ばして、何も言わずに笑顔を浮かべて。

あぁ、この子はとても甘えん坊だから、私に降ろしてほしいのだとすぐに分かったから、その通りにした。君が可愛い声で「ありがとう」と言った時、思わず抱きしめた。

君の名前を教えた時、名前を誰かに教えたらいけないと伝えた時も、まっすぐな瞳でよくいうことを聞いてくれた。
とても嬉しかった。

そのうち⬛︎⬛︎も目覚めた。⬜︎⬜︎と同じように降ろそうかと思ったら、自分でぴょんと降りてこっちに走って向かってきた。
この子は元気な子なのだとすぐに分かった。

「おはよう!」ふたりともよく似た可愛い声だが、この子はどこか力強さのある雰囲気の話し方で、自分で作っておきながら不思議だと思ったよ。

そのあと君たちは頑張ってお話しをしていたね。

「ね、⬛︎⬛︎ちゃ。このこ、なんていうの?」
「あ、私かい?私は……先生や博士と呼ばれることが多いかな。」「んー。ちがうの。」「どうしたんだい?」

「しぇんしぇ も はかしぇ も ちがうー!」「え?」
「うん!ボクもそうおもう!」「どうして?」
「「だって ボクたちの うみのおや だもん!」」

「産みの親……まあ、確かに……?」「んー!」
「ね、⬛︎⬛︎ちゃん、この うみのおや の ひと、なんてよぶ?」「えーと……。」

「おかあしゃん?」「ちがうー!」「えー?じゃ、なに?」
「おとうさん だったとおもう!」「そっかー!」
「せーの で よんでみよ!……せーの!」

「おとーしゃー!」
         「はい!」
「おとうさん!」

「お父さん」と呼ばれるとは思っていなくて、とても驚いた……というか、あまりにも嬉しくて、あまりにも可愛くて、あまりにも感動して、私はすごく混乱した!

誰かの親になるということは厳しいことだ。
だが、それ以上に幸せで、輝いていて、かけがえのないたくさんの想い出で満ち溢れている。

君たちはそれを教えてくれた。
本当にありがとう。

いつか、また会える日まで。

「前回までのあらすじ」───────────────

ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!

調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!

……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!

……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。

その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?

それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。

小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?

もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!

というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。

そして、構造色の少年の名前と正体が分かったよ。なんと彼は、父が考えた「理想の宇宙管理士」の概念だった。概念を作った本人が亡くなったことと、ボク以外の生きた存在に知られていないことで、彼の性質が不安定だった原因も分かった。

ボクが概念を立派なものに書き換えることで、おそらく彼は長生きするだろうということだ。というわけで、ボクも立派に成長を続けるぞ!

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11/19/2024, 10:24:23 AM