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「あの日の温もり」


寒い冬の日。
向かい風の中を、ただ一人歩く。
冷たい北風が、頬を刺す。
冷たい、とかを通り越して、もう痛い位。

去年の今頃は、貴方と2人だった。
冷たい風は、貴方がさりげなく私に当たらない様にしてくれてたから、私は寒くなかった。
でも貴方は、その分寒くて、いつも鼻の頭を少し赤くしてたよね。

寒いね、って言いながら、当り前の様に手を繋いだり、抱き合ったり。
そうやって、2人で温め合ってきたよね。

その温もりは、あの頃の私にとっては当り前で、永遠に続くと思っていた。
ある日突然、断ち切られるなんて、想像もしていなかった。

もう、貴方には逢えない。
貴方の声を聞く事も、姿を見る事も、出来ない。
貴方に触れる事も出来ず、あの日の温もりを感じる事も出来ない。

離れていても、何処かで貴方が生きてさえいてくれたなら、それで良かったのに。
それさえ諦めなければならず。

ただ一人、寒さを、痛さを、悲しみを、空虚さを、噛みしめる。
もう一度あの日を、と願いながら……

2/28/2025, 10:18:17 AM