――清く正しく生きていく。
それは、私が私である為の必須条件。
なぜなら私は「シンデレラ」だから。
継母や義姉だちのお世話係で、灰被りの地味な疫病神。
「お母様、早く行きましょう!」
今夜、お城で開かれるらしいパーティにも、もちろん行けるわけがない。
「シンデレラはそこの床でも磨いてなさい。帰ってきた時にまだ汚れがあったら招致しないからね!」
ネズミさんたちがせっせと作ってくれた淡いピンク色のドレスめ、引きちぎられたせいでボロボロの布切れになってしまった。
「あんたの分まで楽しんでくるわ。」
彼女たちを載せた馬車が地平線の先へ行ってしまった頃、ふわりと不思議な感覚が私を包む。
「おやおや、可哀想なお嬢さん。私があなたをパーティまで連れて行ってやろう」
途端に周囲が明るくなり、私の身体に水色のふわふわとしたレースが何重にも重なった。
「あなたは……?」
「私はしがない魔法使いだよ。ほら、時間が無いよ。この靴をお履き」
言われるがままに差し出されたガラスへと足を運ぶ。
ひんやりとした触感を感じると共に、非日常的な光景にドキドキと胸が高鳴った。
「魔法は12時までしか続かないよ。いっぱい楽しんでおいで」
おばあさんの注意もそこそこに、馬車へ乗り込んだ。
今日はなんだか、いつもと違う。新しい何かが私を待っている。
不思議とそんな気がした。
No.15【昨日と違う私】
5/22/2025, 2:45:43 PM