特別な存在
———いやなのです。全てが。
こんな醜い顔に生まれてきたのならしょうがない、で割り切れるほど現実は甘くはなく、ある学生はわたしの顔を覗いたかと思うと苦い顔をして「うわぁ」とだけ言い残していきました。
「なんと醜い」
鏡台の前に立ち、頬に手を添えてやると歪な骨格が浮かび上がってくる。
でこぼことした感触と、顔全身を覆うようなそばかすが目に入って脳に伝達された途端、ひどい考えが頭の中を埋め尽くしました。
はぁ、何度吐いたか分からない息を吐き、椅子に身を委ねると、一気に力が抜ける。
ぐるぐると何度も繰り返される焦りと、複雑な感情が混ざり合って、中々抜け出せない。
きっと、整った顔立ちを持つ人は、物心をつく前から褒められ、知らぬうちに依怙贔屓されるのでしょうね。
そして、醜いものには目も当てられずに育ち、挙げ句の果てには心のない言葉をかけられる、こんなのは理不尽でしょうに。
可笑しくて、笑いが込み上げてきてしまいました。
声に出してみると、さっきまであったものがスゥッと抜けていくような気がして、声は更に大きくなる。
視界を動かすと目の前の鏡に、笑顔のわたしが写りました。
自然と手を前にして、鏡越しに頬に手を当てました。
さっきとはまた何かが違うような、気がします。
何かに縋れるのなら、きっと、なんでもよかったんです。
なんと名付ければいいか分からない、この感情。
それを持ったのは歌が上手い人でも、尊敬する人でもなく、学校一背の高い人でもない。
他でもない、わたしでした。
3/24/2024, 9:55:41 AM