スマイル
幸せだから笑うのか、笑うから幸せになるのか。人類は決して、これらの因果性を見出すことはできない。何故なら、我々は嗤いも不幸も自らの手で生み出すことができるのだから。
――伊藤勳「幸福をもたらす数字」福歴二〇四年
真冬ともなれば、朝晩はおろか昼ですら当然の顔をして気温が氷点下となる。外回りの営業に行くのも嫌になる日々だ。
客先から提出を急かされている見積書の作成があるだとか、締め日が近付いているにもかかわらず整理していない領収書があるだとか、営業に行かなくてもいいような言い訳に使える内勤業務はいくらでもでっち上げることができた。
その策を使わなかったのは、一日おきにそんなことをしていればさすがに部署内外からの視線が氷点下よりも冷ややかなものになっているからである。
――ああ、こうなると当分の間は毎日外に出なければならないな。ルート営業なのだからそこまで必死に回らなくてもいいのに、内勤のやつらはそんなことも分からない。
遠藤は移動の合間に喫煙所に入り、束の間のヤニタイムに浸っていた。
スーツにタバコの臭いがついてしまうが知ったことか。吸う場所まで定められてしまった喫煙者がこれ以上肩身が狭い思いをしなければならない謂れはない。
喫煙者たちの口からすっぱーと吐き出される煙は、喫煙所の優秀な換気システムによってあっという間に室内から消えていく。
あとで書き直すかも
2/9/2023, 8:52:16 AM