香草

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「色とりどり」

ネオンに彩られた店内はまるでクラブのようで酔えるもんも酔えない。映える居酒屋に行こうと誘われてついてきたはいいが1秒ごとに色が変わるネオンに疲れてしまった。
会計しとくから、と自撮りしまくっている友達を外に追い出した。
ふと財布を出す手が止まる。
それは店員の彼女の服と頭がありえないほど奇抜だったからではない。
「小学校…一緒だった…?」
おそるおそる声をかけると驚きで目が大きく開かれた。
私は鳥肌が立った。
クラスに一人はいるおしゃれな女の子だった。
ゆるくウェーブした髪にスパンコールで「SMILE」と書かれたスウェットを着て小学生ながらスキニージーンズを着こなしていた。
新しいものや可愛いものをたくさん持っていて人気者だった。そこまで仲がいいわけではなかったけれど、何人かでお揃いのものを持ってたりした。

「久しぶりじゃーん」
じゃらじゃらと指輪を鳴らして親しげに手を振る。
なんていうスタイルなんだろう?ストリート?ロリータ?ダメージ加工されたTシャツにふわふわのパニエとビビッドピンクのスカートを合わせている。
まさにちくはぐだけれど、ネオン映えを売りにしている独特な居酒屋だから浮いていない。
しかし彼女から目が離せないのはその服装のせいではなかった。
まるで万華鏡のような瞳だった。人形の目に使われるビー玉のような。
白目がほとんど見えない大きな瞳でネオンに照らされているのかくるくると色とりどりの虹彩が回る。
おそらくカラーコンタクトレンズなんだろうけど、じっと見てると催眠術をかけられそうだ。
まるで人ならざるもののような感じがして私は早々に店を後にした。
後日親に彼女のことを話した。母親はありえない、というように眉をひそめた。
「あの子亡くなってるわよ。モデル撮影のスタジオで火事があって。遺体も残らなかったって事務所から連絡があったそうよ」

1/9/2026, 9:38:16 AM