『無垢』
『ぱぱ〜! はやくこっちきて〜!』
幼き日の思い出。美しくて、明るくて、優しい思い出。
あの頃の私は良かった。純粋で、無垢で、ただの少女だったから。
だが、それはいつまでも続かない。
全てに終わりは来る。それがわかったのは、目の前で父が殺された日。
辛かった。悲しかった。ずっと一緒だと思っていた。
でも、そんな事も願わせてくれない。叶えてくれない。
あの日、父を殺された時、目の前の男を殺すと決めた。父の無念を晴らすと。
そして——
「お父さん……終わったよ」
私は今、そいつを踏みつけ、笑っている。赤く染まり、動かなくなった人間という名の抜け殻を。
あの頃は良かった。笑顔で、純粋で、無垢でいられたから。
5/31/2024, 1:03:18 PM