NISHIMOTO

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伸びない髪。増減も劣化もない細胞。減らない腹に排泄のない身体構造。
外側だけをそっくり写し取って私に手を伸ばす。
「触れ合いが恐ろしいと、君が言ったんだよ」
そうだ。確かにそう言った。
人間の皮膚というものは微かに産毛があったりするもので、それがどうも気味悪く感じられた。獣と同じくせに「わたしたちだけは違うのだ」と恐れ多くも君臨しているように思えて。
どうせ肉のくせに。皮袋を擦り合わせて触れるという行為は酷く嫌悪感を掻き立てる。
「わ、たしは、それでもあなたが好きだった」
「より君の好みに変化したんだ」
「それでも……それでも……」
人形の足元に縋る。初めて触れた体は冷たく見えて暖かかった。模しているのだと気づくも指先から侵食するような不快はない。
「前のあなたの方が良かった……」
「やっぱり僕らって相性が悪いんだよね。愛し合っているけれど」
膝を折って私に腕を回す。服の上でいちど止まってから徐々に抱きしめる、あなたの。
そういう優しさが好きだと伝わらなかった愛を恨んだ。

5/21/2023, 1:39:54 AM