毟り取った雑草はビニール袋を満たした。
空虚な一戸建てをぐるりと囲むような泥の帷に咲く夏草を、ひとつ残らず始末した。
この頃は雨なども降らず、猛暑の日々が続いている。
早く秋という季節が訪れれば、ちょっとはこの鬱屈とした心も癒されるだろうか。
修学旅行で見た京都の寺を思い出す。紅葉が散ったらきっと綺麗だ。
数日経った。或いは数週間が経った。
夏草は伸び切っていた。
相変わらず外は炎天下で、蝉の鳴き声が耳を劈く。
ふと、この緑達は、どこまで根を張っているのだろうと思った。
きっと自分の想像を遥かに超える地下深くまで、生命活動を絶やすことのないよう埋まっている。
だから自分のこの閉塞感や卑屈な感情も、いくら毟り取っても消えないのだろう。
もし今度外に出て、長い距離を歩くことができたら、除草剤を買おうと思った。
三十五作目「夏草」
8/28/2025, 11:09:38 AM