『世界に一つだけ』
俺は世界に一つだけほしいと願うのなら、「愛」だろう。
俺はずっと、施設孤児だった。
だから人の暖かさも優しさも知らない。
施設の野郎共は、俺の右目に大きなやけど跡があるからといって俺をいじめた。
罵倒や暴力は日常茶飯事。
時には、「お前は可哀想だ。だからこの俺がその目ごと消してやんよぉ!」と言いながらナイフを取り出してきたこともあった。
だが、かろうじて小、中、高は行かせてもらえた。
小学生のころは、施設の野郎共と一緒で、罵倒を浴びせられた。
まあ、チビの頃からアイツらにひでぇ罵倒を言われてきたから苦でもなかった。
中学生の頃は、時期も時期で自分の目が嫌いで眼帯をしていた。
周りのやつは、俺を中二病扱いしてきやがった。
また、いじめられた。
ある日、プールの授業があった。
俺は、眼帯をしているから一度も入らなかった。
だが、クラスのガキ共が俺を突き落としてきやがった。
俺は、勢い良くプールに落ちた。
起き上がったとき、クラスメイトが唖然として俺を見ていた。
その時、気づいた。
「嗚呼、火傷がバレちまった。」ってな。
その日から、いじめはエスカレートしていった。
ガキ共が、「なんでそんなふうになったんだよぉ?」「お前、施設育ちってマ?なんでw?親に捨てられたw?」「うわーw!可哀そw」
その言葉にたいきれなくなった。
「親は死んだわ!俺が9歳ときに火事でやけどおったんだよ!なにw?そんなんもわかんないのw?馬鹿じゃん!バァーカ!!」
ガキ共は黙った。
その瞬間、俺は殴られた。
だけど痛くなかった。
もう麻痺してた。
俺は、もうどうでも良くなった。
そしたら急に、笑いたくなった。
「アハハハハ!」
ガキ共は、俺の様子がおかしいことに気がついた。
その日からいじめはなくなった。
高校は、Fランに入った。
正直どうでも良かった。
だから、単位だけとって施設に帰った。
その後は、暴力、暴力。
でも最近、アイツらの弱点がわかった
だからまた殴られそうになったときに、ヤれた。
高校に行ってから、一年。
俺に話しかけてくれた、女子がいた。
その子の名前は、由緒(ゆい)といった。
なぜ話しかけてくれたのかは、わからない。
でも、その日から何度も話しかけてくれるようになった。
俺も、少しづつ心を開いていった。
そんなある日俺は聞いてみることにした。
「なぁ、由緒。なんでこんな俺に話しかけてくれたんだ?」
すると、彼女は「だって、幸人(ゆきと)くんが私の事助けてくれたんじゃん。」
「え?」
「覚えてないの?私が9歳の頃私の家が火事になって、幸人くんのご両親と幸人くんが助けに来てくれたんじゃん。」
その時、思い出した。
俺が7歳のときに話しかけた、怖がりな女の子。
そこから、心を開いていってくれた。
親も、その女の子の親と仲良くてよく遊んだ。
でも、ある日その子の家が燃えた。
親は、俺を置いてその子を家に入っていった。
俺は、置いていかれたと思って追いかけたんだっけな。
俺は、確か親を探しているときに助けを求められた。
「ゆっちゃん!た、助けてぇ、、、。」
その子は、足を怪我していた。
俺は、その子をおんぶして家を出た。
その数分後にその子の親が出てきた。
その瞬間、家が崩れた。
そのことを思い出した俺に、彼女は言った。
「ご両親元気?ゆっちゃん」
俺は、「親は、、、死ん…死んだよ、、。」
由緒は一瞬顔を歪めた。
俺はそれに続けて、「俺さぁ、これ、見て。」
そう言って、髪をかきあげた。
そこには、視力の失った火傷した目があった。
由緒は、それを見ていった。
「ごめんねぇ、、。ゆっちゃん。私を助けなければそんなふうに、ご両親も亡くならなかったのに…。ごめん、ごめんねぇ、、。」
俺は、その言葉に親が死んだことに初めて泣いた。
彼女は「ゆぅっちゃぁん、で、でももう大丈夫。私がついているからねぇ。」
と言い、俺を抱きしめた。
俺はその温かみのある事でやっと愛を感じられた。
俺は更に泣いた。
少し経ったあと、俺は施設を出た。
由緒のご両親の養子にしてもらったんだ。
あのあと俺は、由緒の家に行って由緒のご両親に泣いて謝られた。
今は幸せに生きている。
子供にも恵まれた。
俺は、由緒と結婚したんだ。
これで、母さんたちも成仏してくれるかなぁ。
終わり
9/9/2023, 3:37:03 PM