見咲影弥

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 彼の送ってくる写真はいつも逆光で対象が上手く見えない。どれも決まって真っ黒な陰になってしまっているのだ。

『写真を撮るのが得意じゃないんだ』

彼はそう言って誤魔化す。逆光くらい、場所わ変えたら何とかなるだろう。敢えてそうしてるに、決まってるのだ。

 私はあることを提案してみた。

『ねぇ、外じゃなくてさ、部屋の中で撮ってみてよ。電気のついてるところで』

そうしたら、きっと解決する筈なのだ。

 だが、彼から送られてきたのは、ランプシェードか何かの柔らかな光がバックにあって、ぼんやりと姿かたちが見える写真だった。

『もう、いい加減にしてよ。どうしてあなたはいつもそうやって姑息な真似をするの』

あなたはもしかして、私を欺こうとしているんじゃないの?

思わず打ち込んだが、思いとどまってバックスペースを長押しする。

『自分の顔に、自信がないんだ』

彼は暫く経ってそう送ってきた。

私だって、自分の顔に自信はない。でも、あなたのためだと思って、顔写真を送ったのに。友達にカフェで撮ってもらったとっておきのものを。それなのに、あなたはどうして……。

「それなら、仕方ないね」

でも、ここで逆上するわけにはいかないのだ。彼を絶対私のものにしなくちゃならない。容姿以外はハイスペックな男、こんなの、逃すわけにはいかないじゃない。

 ホーム画面に設定した彼の写真。今は逆光で見えないけれど、いつかきっと、この仮面を脱いでくれる時が来る。そう信じてる……。

1/25/2024, 2:33:33 AM