Open App

 

 私達が出会った、この美しい景色がいつまでもあればいいのに。
 
 街と海を一望出来る丘の上。

 その中でも夕陽が海に溶けて夜を呼ぶ瞬間がお気に入りだった。限られた時間の中でずっと先の未来を確かめることは不可能だけど。街は海に飲まれて流されてしまうかも、街が広がって海がなくなってしまうかも。丘が削れてしまうかも知れない。私よりずっと長生きな大樹に話しかける。

「聞いてもらえる?もしね。生まれ変わってこの場所があったらここで
『1000年先も』彼と会って、また恋をしたいなって。」
 
 長すぎるんじゃない?だなんて言わないで。
 それまでに彼を口で一回は負かせられるような知識をつけて、彼の隣で胸を張って歩けるような人になってみせるんだから。ほんのちょっと背伸びをしたいの。

「でもその前に彼に見つかってしまうかも。」
 葉がさわさわと擦れ合い「なぜ?」と聞かれた気がした。
「あなたも見えるでしょ?」
 だってほら、行き先を告げてもないのに、遠くから彼が私に手を振っていた。

2/4/2023, 9:37:11 AM