『遠くの空へ』
願いを込めていつか赤い風船を遠く空へ飛ばしたい‥。大好きな小説のラストシーンにあやかって、私は二十歳の誕生日に手紙を添えた風船を空へ飛ばした。
そんな事をすっかり忘れたある日、庭で割れた青い風船を拾った。見ると手紙も付いている。
「こんにちは。僕は中川弘樹と言います。先日、
吉野亜香里さんのお手紙を受け取りました。是非お返事を‥との事でしたが残念ながら住所が無かった為、風船に託します。どうか亜香里さんに届きますように」
こんな夢みたいな事があるのだろうか。あの風船の返事が返ってきた、しかも風船で私の所に!
こうして繋がった中川さんはもしかしたら運命の人なのかもしれない。「着きましたらご一報を」に、早速手紙を‥と思ったが、残念な事にこの手紙にも住所が無かった。
4/13/2024, 6:48:21 AM