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【部屋の片隅で】

今、家には僕しか居ない。騒がしく乱暴な同居人が居ないのは良いことだ。自分の好きなように、のんびりと過ごせるから。

部屋の片隅で同居人が買ってきたチーズを頬張る。濃厚な味わいが口の中に広がり、大きな満足感を得られた。まさに至福のひと時だ。

それにしても、だだっ広い部屋の隅っこに居るのは落ち着く。部屋のど真ん中に居るとどうにもソワソワするし、同居人とはあまり顔を合わせたくない。同居人も僕のことを嫌っているようだから、お互いに関わらない方がいいだろう。

僕がチーズの最後のひとかけらを口に入れたところで、ドアを開けたかのようなガチャリという音がした。続いて聞き慣れた足音が近づいてくる。まずい、同居人が帰ってきた。顔を合わせたくないと思い、僕は身を縮こまらせる。

「……キャーッ!!」

同居人の悲鳴で耳が痛い。部屋の隅にあるハンガーラックに上着をかけようとしたところで、僕を見つけたらしい。

「なんでまたネズミがいるの!?」

同居人がもううんざりとでも言いたげな顔で言って、何かを探し始める。いつも通り、僕を退治するための武器を探しているのだろう。
だけど、僕には素早く動ける自慢の足がある。部屋の床を蹴って駆け出せば、同居人の姿はすぐに見えなくなった。
同居人には悪いけど、僕はこれからも同居を続けさせてもらうよ。

12/7/2023, 10:41:58 AM