Ryu

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何でも持ってる奴っているんだよね。
勉強が出来て、スポーツも得意で、イケメンで、優しくて。
同じ人間なのに、どうしてこうも違う?っていう…。
それが俺の兄貴。
俺とは真逆の存在。

比べられて嫌になる、って話を、最近仲良くなった奴にしたら、
「俺の兄貴なんか、札付きのワルで落ちこぼれ。周りからの評判は最悪だし、両親もとうにサジを投げてる。お前みたいに、自慢の兄貴がいるのが羨ましいけどな」
と、言われた。

なるほど、自慢の兄貴か。
確かに、自分の兄貴の悪評ばかり聞かされるのは、なかなかキツイことかもしれない。
兄弟の話は我がことのように聞こえたりする。
どーしよーもない兄貴を持った彼の不満も、推して知るべし、だ。

「だけどさ、そんなどーしよーもない兄貴だけど、俺には優しくてさ。ホントに困ってる時、自分のこと放り出して力になってくれた。俺にとっては、自慢の兄貴だったんだ」
彼は遠い目をして言う。
「去年の冬に、ヤバイ奴に絡まれた俺を救おうとして死んじまった。兄貴にもう一度会いたいよ」
…しばらく、何も言えなかった。

そこに、これまた最近仲良くなった友達がやって来て、
「え、何、何の話?兄貴の話?ああ、お前ら二人とも兄貴がいるんだ。いいなー、俺なんか姉貴だぜ。口も聞きやしない。兄貴欲しいなー、一緒にゲームしたいなー」
こんな能天気な弟を持った姉も、それはそれで羨ましい。

帰り道、家に帰ったら、久し振りに兄貴とゲームでもやってみよーかなー、でもあいつ、ゲームもやたら上手くて、結局いつも俺が負けてバカにされるんだよなー、やめとこうかなー、とかいろいろ考えて、自然に口元が綻んでゆくのを感じていた。

3/26/2024, 10:06:27 PM