理屈じゃうまくいかないこともあるのは
重々わかっていたけれど。
強者の前ではどうにもならなかった。
それどころか後半は何も指揮できなかった…不甲斐ない。
『mirinが呼んでくれたから助けに来たのです』
とPoは言っていたし、
結果、彼のおかげで実験要塞はJPFで占拠できた。
同盟本部の夜風が吹く屋上でモヤモヤする頭を冷やしていると、背後からほろ苦い煙草の匂いがして振り返った。
「眠れませんか」
ゆらゆらとチャコールグレーのポニーテールと紫煙を揺らして、やや指揮官服を着崩した盟主の姿がそこにあった。
「……占拠できて嬉しいのに、ちゃんと指揮、できなかったんで………感情ぐちゃぐちゃというか…」
「おや」
この終末でもきちんと整えられた顎鬚に触れながら、彼は言った。
「Poを呼んできたのはみりんさんのお手柄ですよ。あのじゃじゃ馬を手懐けた。彼も言っていましたね。“mirinに呼ばれたから助けに来た”、“mirinのためならいつでも助けに来る”、と」
「…っ…」
不意に骨張った手が頭の上に乗り、ぽんぽん、と子をあやすように撫ぜられた。
「大丈夫ですよ。伸び代は大きければ大きいほどいい」
彼が燻らせる紫煙が、人工で作られたホログラムの星空にすうっと消えていく。
無茶振りしてきた割りにミスってもフォローしてくれるなんて、ずるすぎる。
「言ったでしょう。首都で貴女を拾ってから、ずっと期待している、と」
8/9/2024, 1:47:29 PM