No.9『面倒臭がりの君とお節介なわたし』
散文 / 掌編小説
生まれて来た時はひとりだったのだから、死ぬ時もひとりでいいと君は言う。クールを気取っているけど実は物凄く面倒臭がりの君は、世話を焼かれることも面倒臭いと思っているのだろう。
子供の頃、
「ともはるくん、一緒に学校行こー!」
毎朝、君の家の玄関先で声を張り上げては、君を誘って学校に行っていた。眠そうな目を擦りながらも君は玄関から出て来て、誘ったわたしには目もくれずにさっさと登校してしまっていたっけ。
無口で無愛想だけどイケメンな君は、放っておいても誰かが世話を焼いていた。君は面倒臭がりながらもされるがままで、こうして立派な大人になった。
なのに今、そんなことを言う?
誰が世話を焼いたと思ってんの。そう言いたい言葉をグッと飲み込んだ。君に言わせれば世話を焼いてくれと言ったことはない、その通りで、大きなお世話でしかないのだから。
ひとりで生まれてひとりで死んで逝きたい君には、世話を焼いてくれる仲間がたくさんいる。子供の頃から世話焼きでお節介なわたしには、世話を焼いてくれる仲間はひとりもいないというのに。
お題:仲間
12/11/2022, 9:39:46 AM